1RM(最大挙上重量)の計算方法
1RMは、すでに挙げた重量とレップ数から予測式で逆算できます。たとえばスクワットで100kgを5レップ挙げたなら、Epley・Brzycki・Lombardiの3つの式を平均して115.5kg前後という数字が出ます。バーベルに本当の限界まで重量を積む必要はありません。
なぜ実際に最大重量を試さないのか
1RMを直接測るには、フォームが崩れる寸前まで重量を積み上げていく必要があります。神経系も関節も疲労した状態で挑む一発勝負なので、腰や肩を痛めるリスクは決して小さくありません。しかも普段のトレーニングでそこまで攻めた重量を扱う機会自体が少なく、正確に測るには専用のセッションを組むことになります。推定式を使えば、いつものワークセットの数字をそのまま流用して、同じ精度に近い値を安全に手に入れられます。
3つの計算式
Epley式
1RM = 重量 × (1 + レップ数 / 30)
最もシンプルで、ジムのアプリや電卓に組み込まれていることが多い式です。レップ数が増えるほど直線的に重量を積み増していく計算になるため、高レップ域ではやや数値が大きく出やすい傾向があります。
Brzycki式
1RM = 重量 × 36 / (37 - レップ数)
分母にレップ数が入っているため、レップが増えるほど分母が小さくなり、予測値が急激に伸びていく形になります。低レップから中レップ帯ではEpleyと近い数字を出しますが、式の性質上37レップに近づくと発散してしまうので、高レップの入力には向きません。
Lombardi式
1RM = 重量 × レップ数^0.1
指数が0.1と小さいため、レップ数を入力しても値の伸びが緩やかです。低レップでは他の2式よりやや高めに出ることがある一方、高レップになっても極端に暴走しないので、粗いバランサーとして機能します。
計算例:100kgを5レップ
実際の数字を入れてみます。
| 計算式 | 結果 |
|---|---|
| Epley | 116.7kg |
| Brzycki | 112.5kg |
| Lombardi | 117.5kg |
| 平均(メインの数値) | 115.5kg |
3つの式には5kg近い開きがあります。どれか1つだけを信じると、その式特有の癖に引っ張られてしまうため、この計算ツールは平均値を主要な結果として表示します。特定の式の偏りを打ち消し、極端に高すぎる、あるいは低すぎる推定を避けるための工夫です。
レップ数が増えるほど式がバラつく理由
同じ100kgでも、レップ数を変えると3つの式の差はもっと広がります。
| レップ数 | Epley | Brzycki | Lombardi |
|---|---|---|---|
| 5 | 116.7kg | 112.5kg | 117.5kg |
| 8 | 126.7kg | 124.1kg | 123.3kg |
| 12 | 140.0kg | 144.0kg | 128.2kg |
5レップでは3つとも110〜118kg台にまとまっていますが、12レップになるとEpleyとLombardiの差は10kg以上に開きます。これはどの式も本来、限界に近い低レップのセットから最大値を逆算するために設計されているためです。高レップのセットは筋力そのものより持久力やペース配分の影響を強く受けるので、式が前提とする「純粋な最大筋力」からずれていきます。ストレングス系のコーチの間で「3〜5レップ、限界近くのセットが一番信頼できる推定材料になる」とよく言われるのは、この発散の傾向があるからです。
パーセンテージ表をトレーニングに使う
115.5kgという推定1RMが出たら、そこから各レップ数に対応する重量を割り出せます。
| レップ数 | 1RMに対する% | 重量 |
|---|---|---|
| 1 | 100% | 115.5kg |
| 3 | 94% | 109kg |
| 5 | 89% | 103kg |
| 8 | 81% | 93kg |
| 10 | 75% | 87kg |
| 12 | 69% | 80kg |
この表はそのままトレーニングブロックの設計図になります。純粋な最大筋力を伸ばしたい週は103〜109kgでの重めのトリプルやダブルを中心に組み、フォーム固めや筋肥大を狙う週は87〜93kg台で8〜10レップの高ボリュームセットに切り替える、といった具合です。毎回感覚だけで重量を決めるより、この%表を基準にすれば週ごとの負荷の波を客観的に管理できます。
自分の数値で計算する
挙げた重量と完了したレップ数を入力するだけで、3つの式の平均値と1〜10レップ分の重量表がすぐに出てきます。
よくある間違い
限界からほど遠いセットで計算する まだ2〜3レップ余裕を残した状態のセットを入力すると、実際の1RMより低く出がちです。限界か、それに近いところまで追い込んだセットの数字を使ってください。
高レップのセットで推定しようとする 15レップや20レップのセットを入力するのは避けたいところです。前述の通り、レップ数が増えるほど式同士の予測がバラつき、持久力の影響も強く出るため、精度が大きく落ちます。
推定値を今日の目標にしてしまう 115.5kgという数字は理論上の天井であって、疲れている日や睡眠不足の日にいきなり挑む重量ではありません。ウォームアップを重ね、体調の良い日に段階的に近づけるべき数字です。
最後のレップのフォームが崩れている 限界近くで代償動作が入ったレップをカウントに含めると、実際より高いレップ数として計算され、1RMが過大評価されます。可動域とフォームが保てた回数だけを数えてください。
ウォームアップなしで本当の最大挑戦に飛びつく 推定式はあくまで安全な代替手段です。もし実際に真の1RMを測る機会があるとしても、軽い重量から段階的に負荷を上げていくウォームアップセットを挟まずに、いきなり限界重量へ跳ぶのは怪我のリスクを大きく高めます。
よくある質問
3つの式のうちどれが一番正確ですか? 種目やレップ数によって当たり外れがあり、どれか1つが常に優れているわけではありません。低〜中レップではEpleyとBrzyckiが近い数字を出し、高レップではLombardiのほうが暴走しにくい傾向があります。そのため1つに絞らず、3つの平均を目安にするのが実用的です。
推定精度を上げるには何レップで計算すればいいですか? 3〜5レップ、限界にかなり近いセットが最も信頼できます。10レップを超えると持久力の影響が大きくなり、式ごとの差も開いていくので、可能な限り低めのレップ数のデータを使ってください。
推定した1RMに実際に挑戦しても安全ですか? 体調が万全で、十分なウォームアップを済ませ、正しいフォームを保てる自信があり、できればスポッターがいる状況でのみ検討してください。それでも推定値は理論上の上限なので、初回から満額を狙うより、その手前の重量で様子を見ながら段階的に近づくほうが安全です。
種目によって計算式の相性は変わりますか? 式自体はどの種目にも同じ形で使えますが、ベンチプレスのような上半身の種目とデッドリフトのような全身種目では、疲労のたまり方やフォームの崩れやすさが異なるため、実際の誤差の出方には差が出ます。特にテクニックの比重が大きい種目ほど、低レップで計算したほうが無難です。