健康

平均動脈圧(MAP)の計算方法(計算例つき)

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平均動脈圧(MAP)は、1回の心拍サイクルの間に動脈にかかる平均的な圧力で、収縮期血圧や拡張期血圧を単独で見るよりも臓器への灌流状態を的確に反映する値です。計算式は MAP =(収縮期血圧 + 2 × 拡張期血圧)÷ 3。正常な範囲はおおよそ70〜100 mmHgとされています。

この記事では計算式の意味、実際の数値を使った計算例、そしてショックの現場で見落とされがちな計算上の落とし穴を扱います。

計算式

MAP の計算式は次の通りです。

MAP = (収縮期血圧 + 2 × 拡張期血圧) / 3

これは次の形と同じ意味です。

MAP = 拡張期血圧 + (収縮期血圧 - 拡張期血圧) / 3

ポイントは拡張期血圧が2倍で数えられているところです。単純に収縮期と拡張期を足して2で割る平均ではありません。理由は時間の配分にあります。正常な心拍数では、心臓は1回の心周期のうちおよそ3分の2の時間を拡張期(心臓が拡張し血液で満たされる期間)に費やし、残り3分の1が収縮期です。血圧は時間で重み付けした平均であるべきなので、時間の長い拡張期の圧力がより大きく効いてくる、それが拡張期血圧を2倍にする根拠です。

この式で得られるMAPの典型的な範囲はおよそ70〜100 mmHg。この範囲に収まっていれば、通常は主要臓器への灌流が保たれていると考えられます。

計算例

収縮期血圧120 mmHg、拡張期血圧80 mmHgという、よくある正常な血圧を例に計算してみます。

項目
収縮期血圧120 mmHg
拡張期血圧80 mmHg
計算(120 + 2×80) / 3 = 280 / 3
MAP93.3 → 四捨五入で93 mmHg
脈圧(収縮期 − 拡張期)40 mmHg

93 mmHgは正常範囲(70〜100 mmHg)にしっかり収まっており、灌流上の懸念はありません。脈圧、つまり収縮期血圧から拡張期血圧を引いた値も合わせて見ておくと、動脈の弾性や心拍出量の目安になります。この例では脈圧40 mmHgで、これも典型的な範囲です。

自分の数値で計算する

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この計算ツールは教育目的の参考情報にすぎません。臨床判断や妥当な血圧測定に代わるものではありません。平均動脈圧はおよそ65 mmHg以上が灌流の目標として用いられることが多いですが、臨床全体の文脈で解釈してください。
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なぜ65 mmHgが重要か

MAPがおよそ65 mmHg以上というのは、臓器灌流を保つための一般的な最低目標として広く使われている数値です。特に敗血症性ショックの蘇生では、Surviving Sepsis Campaignのガイダンスに沿ってこの65 mmHgが目標値として用いられます。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、慢性的に高血圧のある患者では、普段から慣れている灌流圧を保つためにより高いMAPが必要になる場合もあり、実際の目標値は個々の患者の状態によって変わります。

ここで実務上とても重要な落とし穴があります。収縮期血圧88 mmHg、拡張期血圧52 mmHgという、敗血症性ショックで昇圧薬の調整前後によく見られる低血圧の患者を考えてみます。

正しい計算式では、MAP = (88 + 2×52) / 3 = (88 + 104) / 3 = 192 / 3 = 64 mmHg。これは65 mmHgの目標をわずかに下回っており、蘇生がまだ不十分で昇圧薬のサポートを増やす必要があることを示しています。

ところが、一部の人が使ってしまう素朴な近道、収縮期と拡張期を単純に平均する計算だと話が変わります。(88 + 52) / 2 = 70 mmHg。この数字は65の目標をすでに上回っており、患者は十分に灌流されているように見えてしまいます。

計算方法結果65 mmHgとの比較
正しい加重平均(MAPの式)(88 + 2×52) / 364 mmHg目標を下回る
誤った単純平均(88 + 52) / 270 mmHg目標を上回る(誤り)

わずか6 mmHgの差ですが、この差はまさに臨床判断が分かれる境界域の低血圧の場面で、間違った方向に閾値をまたいでいます。単純平均を使うと、実際には蘇生が足りていない患者を「十分に灌流されている」と誤って判断してしまう可能性があります。

よくある間違い

単純平均とMAPの式を混同する。 上で見た通り、収縮期と拡張期を(a+b)/2で平均するのは、MAPの計算式ではありません。拡張期血圧を2倍で数える加重平均が正しい式であり、境界域の数値では結果が閾値の反対側に振れることがあります。

カフ血圧の精度の限界を忘れる。 ショックの状態や不整脈がある患者では、カフ(非観血的血圧計)による測定自体の精度が落ちます。血管が収縮している、脈が不規則である、といった状況では、そもそも入力値である収縮期・拡張期血圧の信頼性が下がるため、MAPの式がどれだけ正確でも限界があります。

頻脈時に式の前提が崩れることを見落とす。 MAPの式は、収縮期と拡張期の時間比がおよそ1対2であることを前提にしています。これは正常な心拍数では成り立ちますが、頻脈になると拡張期の時間が収縮期よりも大きく短縮するため、この前提が崩れ、式は粗い推定値になります。重症患者や頻脈の患者では、実際の圧波形を連続的に測定する動脈ライン(Aライン)によるモニタリングの方が、カフ計算式より信頼できます。

1回の測定値をトレンドと取り違える。 1回のMAP値は、その瞬間のスナップショットにすぎません。昇圧薬を調整している最中や状態が変化している患者では、単発の数値だけでなく経時的な推移を追うことが重要です。

65 mmHgをすべての患者に当てはめる。 65は敗血症性ショックの蘇生目標としてよく引用される数値であり、万能の正常値ではありません。慢性高血圧の患者などでは、個々の状態に応じてより高い目標が必要になることがあります。

よくある質問

平均動脈圧の計算式は何ですか?

MAP =(収縮期血圧 + 2 × 拡張期血圧)÷ 3 です。同じ式を書き換えると、拡張期血圧 +(収縮期血圧 − 拡張期血圧)÷ 3 になります。収縮期120 mmHg、拡張期80 mmHgなら、(120 + 160) / 3 = 93 mmHgです。

なぜ拡張期血圧を2倍で数えるのですか?

正常な心拍数では、心臓は1回の心周期のうちおよそ3分の2の時間を拡張期に費やし、収縮期は残り3分の1です。MAPは時間で重み付けした平均圧なので、時間の長い拡張期の圧力がより大きく反映される必要があり、そのために拡張期血圧を2倍にして計算します。

良い(正常な)MAPとは何ですか?65 mmHgという閾値とはどう違いますか?

一般的な正常範囲はおよそ70〜100 mmHgです。一方の65 mmHgは、臓器灌流を保つための最低ラインとしてよく使われる数値で、特に敗血症性ショックの蘇生目標として引用されます。つまり65は「正常」の下限ではなく、「これを下回ると危険」という臨床的な最低目標に近い数値です。正常範囲の中央から下限に近づくにつれ、65という目標との距離が臨床判断の分かれ目になります。

頻脈は推定の精度に影響しますか?

はい。MAPの式は収縮期と拡張期の時間比がおよそ1対2であることを前提としていますが、頻脈になると拡張期の時間が収縮期よりも大きく短縮し、この前提が崩れます。その結果、式による推定はより粗いものになり、重症患者や頻脈の患者では、圧波形を連続的に測定する動脈ラインによるモニタリングの方がカフベースの計算式より優先されます。

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